村田沙耶香「消滅世界」

消滅世界 (河出文庫)

消滅世界 (河出文庫)

 

知り合いに薦められて、地方入試の際に読んでみました。村田沙耶香は「コンビニ人間」を読んで、”すごくおもしろい、でも、こわい”と思ってましたけど、この作品を読んで、本当にただただこわい、おそろしい、という感想でした。

セックスが古いものとなり、夫婦(家族)とはセックスしない、夫婦以外に恋人をもつ。人ではなく、二次元も愛の対象。結婚や家族という概念が徐々になくなっていく、という世界の話。

SFではあるけど、実際にありえない、とは言い切れない話で、恋愛や結婚、家族というものを考えさせられつつ、背中がちょっと寒い感じになりながら、ページをめくりました。

また、村田沙耶香、読んでみようかと思います。

昔の自分の言葉に、ぐさっとくる

先日、バイト時代の後輩と飲みに行きました。最近の仕事の話や近況から、昔の塾講師のバイト時代の話もいくらかしました。そんな中、私が言った言葉を結構覚えている、みたいなことを言われました。

「日々精進、日々努力」「気合、気持ち、根性」という、生徒たちに言っていたキャッチフレーズみたいなものがあったんですよね。当時はうちわをつくったりしてました。なつかしい。

あと、「世話してもらった分は、若い人に返していけばいい」ということを言っていたそうで、心に残っている、と。これは大学のクラブなどでよく言われていて、若い頃から今もずっと心がけていることなので、当時でも実行できていたのかな、とそこは安心しました。当時からバイトの新人とか若手を集めて飲みに行ったりしてましたね。

ただ、後輩が落ち込んでいる時に、その様子を見て、私と校長(私より10歳上)が、「明けない夜はない」と言っていたそうで。20代なかばでえらそうなことを言ってるな、、、と(汗)。まあ、当時はほんとに慇懃無礼なことが多かったよなと反省が多いです。

まあ、若かりし頃の自分から、今の自分に「明けない夜はないぞ」と言ってもらいますかね(笑)。がんばります。

 

ご報告(京都外国語大学の退職について)

本日のゼミで、今年度の授業が終了しました。

私、この3月で、京都外国語大学を退職することになりました。4月から、他の大学に異動することになります。

3月20日の卒業式のときに報告しようかとも思いましたが、2月、3月と異動の準備もありますし、卒業生のみなさんなどに対して早めに知らせたほうがいい、ということもあり、このタイミングで報告させていただきます。

昨年末から少しずつ教職員のみなさんなどにご報告しており、今日、京都外国語大学の教員として最後の授業となったゼミの最後に学生に初めて報告しました。まだ直接ご報告できていない方もいらっしゃると思いますが、どうかご容赦ください。

大学院を修了後、2002年に京都外国語大学に講師として着任してから、17年間勤めました。京都外大はとてもいい大学で、感謝の念しかありません。またお礼などは3月末に書きたいと思いますが、あと2ヶ月精一杯勤めたいと思いますし、来年度も非常勤として授業やゼミ(月3、4)は担当できるので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

ユペチカ・西森マリー「サトコとナダ」第4巻

第4巻で最終巻。

サトコとナダ 4 (星海社COMICS)

サトコとナダ 4 (星海社COMICS)

 

日本出身のサトコとサウジアラビア出身のナダが、アメリカ留学でのルームシェアを通して交流していくお話。イスラム教というと、つい怖いイメージを持ってしまいますが、このように一緒に生活を経験していけば、イメージとは違う意外なところや身近なところが感じられる、ということなんだな、と思います。

これは宗教に限らず、他の文化でも似たようなことがありますよね。例えばLGBTだったり、身体障がい者だったり、芸能人だったり、大学教員だったり。最初は、なんとなくの全体的なイメージだけで捉えて、接してしまうかもしれません。でも、個人を知ることで、その人がもつ文化を知ることができたり、その人自身を深く知ることができたりするのかな、と思います。

なんとなくのイメージだけで判断しないようにしていく必要があるな、と思いました。そして、いろいろな人と関わっていくことも大事ですよね。

この巻の途中で、アメリカ留学で苦い経験をしたマチコという女の子がでてきます。憧れを持って留学したけれど、大変なことが多くてしんどかった、ムスリムの人たちを怖いと偏見をもっていた、と。サトコがまた留学するチャンスがあるよ、ということを伝えるのですが、とてもいいシーンだな、と思いました。憧れをもってやってみたけど失敗することはあります。その後、その失敗を活かせるか、乗り越えられるか、が大事だなということだと思いました。難しいですけどね。

学生にも広く読んでほしいまんがです。

クイーンをあまり知らないけど、「ボヘミアン・ラプソディ」を観てきました。

先日、話題の映画「ボヘミアン・ラプソディ」を観てきました。知り合いに「泣けるし、感動するから、観てみたらいいよ」と言われたこともあり、それなら行ってみるか、と思いまして。

www.foxmovies-jp.com

私は年代的にあってるんでしょうけど、洋楽もまったく聞かなかったので、クイーンもほとんど知らず、テレビなどで数曲は知ってるけど、くらいです。そのくらいの知識でも面白いのかしら、と思って観てみたのですが、なるほど、たしかに、いい映画でした。

フレディ・マーキュリーの才能やその自信、人種差別や家族の問題、セクシャリティなどからくる孤独や生きづらさ、といった感情が随所に感じられて、なんとも言えない気持ちになりました。また、恋人メアリーはどんな思いだったんだろうか、など、周りの人達の感情についても、いろいろ思うところがありました。

有名になると、傲慢になったり、みんなが群がってきたり、裏切ったり、いろいろなことが起こるんだな、と思いましたし、その際に信じられるものがあるかどうか、ということがとても重要なんだな、と。天才など才能あふれる人は、それだけでは幸せとは限らない、逆に大変なことも多いよね、ということも改めて考える機会になりました。

最後の「ライブ・エイド」のシーンは、さすがの私でも、すごい、と思って鳥肌が立ちました。音楽の力ってあるよね、と思いつつ、聞いてました。

泣くことはなかった(うるうるはしましたけど)のですが、とても感動するいい映画でした。ちょっとクイーンの曲、聞こうかな、って思いましたね。

 

杉浦真由美「ナースのための伝わる・身につく教える技術」

伝わる・身につく ナースのための教える技術 (CandY Link Books)

伝わる・身につく ナースのための教える技術 (CandY Link Books)

 

杉浦さん@札幌医科大学による、ナースのためのインストラクショナルデザイン入門書。

「教える相手ができるようにならないのは教え方がヘタだから」

「相手ができるようにならないのは教える側の責任だ」

という向後先生の講義を聞いて、インストラクショナルデザインの研究に関わるようになった杉浦さんが、自身の急性期病院でのナースの経験を踏まえて、忙しい看護師を意識して事例ベースでまとめられています。

教え方の「コツ」、運動スキル、認知スキル、態度スキル、実践、と構成されて、まんがでの導入や確認テスト、小項目に分けられた説明、と、インストラクショナルデザインの説明を読みながら、この本がインストラクショナルデザインに基づいて作られていることも理解できるのかな、と思います。

報告のスキーマのところで、医療者間のコミュニケーションツール「SBAR」について説明がありました。状況(Situation)、背景(Background)、評価(Assessment)、R(Recommendation)の頭文字をとったものだそうですが、私は知らなかったので、これは他のところでも使いたいな、と思いました。

”ナースのための”とありますが、特にナースの内容に特化しているわけではありませんので、インストラクショナルデザインの実践系入門書として、広く読むことができるのでは、と思います。

インストラクショナルデザインに興味があるけど、ちょっと敷居が高いんよね、といった方、チェックしてみてはいかがでしょうか。

この本で2回出てきた、カナダの精神科医エリック・バーンの「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」という言葉、すごく納得です。授業に限らず、この精神でがんばっていきたいですね。

 

もう1回「講義の復権」の企画をやってみたい

ブログで授業ネタが続きますが、ちょっと今書きたいモードなので。

近年、アクティブ・ラーニングが話題ですが、この流れ自体は10年以上前からなんですよね。大学コンソーシアム京都のFDフォーラムで、”主体的な学び”や”グループ学習”、”プロジェクト学習”などのキーワードがよくあがっていました。

それで、2009年度のFDフォーラムで、同僚の國安さんから相談を受けたこともあって、「講義の復権 ー理論・実践からの分析ー」という分科会を、私が指定討論になって企画しました。この時代のは報告書をWebで公開してないんだな、、、残念。

www.consortium.or.jp

理論的なお話をしてもらえる方を京大高等教育センターの先生方に相談して、安川哲夫先生@筑波大を紹介していただきました。そして、講義のうまい先生として、大島先生@東京工芸大学、そして私の(元)上司の梶川先生@京都外大を登壇者にお願いしました。

この企画はとても満足したことを覚えているのですが、久しぶりに資料を見てみましたけど、やっぱり面白いです。もう1回、こういう企画をどこかでやりたいな、と思いました。

私などは、安川先生のようなお話を聞いたり、学んだりする機会が少ないので、教育学や教育思想の知識もきちんともっておかないとな、と思います。

もちろんですが、アクティブ・ラーニング、主体的な学び、は重要です。ただ、授業すべてをアクティブ・ラーニングにする必要があるわけではありません。昨日のブログと同様、授業目標に応じて教育方法を選択することが重要、ということです。また、カリキュラム全体におけるバランスも考える必要があります。

自分の授業を設計する時に、考えていかないとな。

ちなみに、梶川先生は、授業アンケートで受講生が50名とか100名でも、満足度4.7とかたたき出しています。満足度が4.5を超える、ってよっぽどなのですが、すごいことです。何度か授業も聞いたことがありますが、本当に板書をしながら話している(学生に発問したりはしない)だけで、すごくわかりやすく学術的にも面白い内容になっています。

梶川先生は落語を参考にして授業しているそうです。だから発問はしないんだ、と。かくいう私は、漫談系と言えるでしょうか。この辺の話、昔、よく2人でしました。

梶川先生は、この分科会ともう1回大学コンソーシアム京都のイベントで話をしてもらったので、しばらくいろんな大学からFD講演に呼ばれていました。FDのイベントに参加している教職員って、自分の大学のFDに呼ぶ講師を探しているケースって多いんですよね。梶川先生、ほんとにおすすめなので、ぜひ(笑)。