溝上さん@桐蔭学園の最終講義的な講演を聞いて

第25回大学教育研究フォーラム@京都大、2日目。午前の一般研究では、齋藤さん@大阪大、佐藤さん@京都産業大などの発表を聞きました。

溝上さん@桐蔭学園の特別講演「教育を捨てて教育に戻れ!-大学の授業研究からトランジションをにらんだ生徒学生の学びと成長へ-」。溝上さんの京大におけるインフォーマルな最終講義、っていう感じですかね。1999年から溝上さんとはいろいろお世話になっているので、20年来のつきあいとなりました。

asagao-MLの開設にあたってはお手伝いしたのをなつかしく思い出しました。また、溝上さんが、公開実験授業で授業中の顔上げ行動を分析していたのですが、その情報収集を自動化できないかということが、私の研究のきっかけでもあります。

今回、一番印象的だったのは、溝上さんがいろいろな授業に取り組んでこられたけど挫折してきた大きな理由として、ねらいを持って負荷の高い授業をしていくと、意欲の高い学生が集まってくる、というジレンマでした。こなくてもいい(すでにできそう)学生がやってきて、きてほしい学生がなかなかこない。こういうことよくありますよね。

また、「学生のトップ層を指して「うちの学生は」というのはおかしい。中間層をターゲットにして、大学全体の教育を変えていくには、カリキュラム、授業そのものを変えていく必要がある」ということも指摘されていました。すごく同意です。それでは、その大学の中間層、大学全体を変える話につながらない、ということになってしまいますよね。

個人的に、オナーズプログラム的なものが好きではないのですが、上位層を競争的に選別して授業していったところで、大学全体に波及しない可能性が高い、と考えるからです(もちろん、学科を分割して、その学科全体でやるのであればいいと思います)。

カリキュラムの重要性、教員全体の授業をよくしていく、ということ、大学全体でやっていかないとですよね。そういう点では、初年次教育の重要性はどんどん増していくだろうな、と思います。

溝上さんが桐蔭学園の紹介で、小学校での授業見学や幼稚園に訪問されたことなど、楽しそうに話しているのを見た、よかったな、と思いました。4月から新しい立場になるということで、さらなる活躍を期待しています。最後に少しお話できてよかったです。

f:id:munyon74:20190325094941j:plain

午後はシンポジウム「高校から大学、大学から大学院、大学から社会へのトランジション」。まずは北野先生@京都大学「高大・大大・大社について」。大大接続、とは、大学と大学院の接続のことです。京都大学では「もっと博士を!」という目標があるとのこと。現状、なかなか厳しいですよね、、、。IRなどデータに基づいて、支援していきたい、というお話がありました。「開放系としての大学」で考えることも指摘されていました。

高橋さん@立教大「大学から社会へのトランジション―『自分から動く』『考える』『人と連携する』力を高める―」。社会へのトランジションの難度が上がっていることを指摘した上で、BLPの実践を紹介しながら、リーダーシップの変化、学生が自分で動ける、自分で演出できるようにしていくことの重要性について説明されました。そうだよなぁ、と思いながら聞きました。

山田くん@京大「トランジションをどう理解し、学校教育の中に位置づけるか」。トランジションを幸福度、ウェルビーイング、エンゲージメント(関与)と関係づけながら、説明してくれました。やはり最後の”適切な”関与、ってどうしたらいいのかな、と考えさせられました。低関与がだめなのはわかるけど、だからといって高関与になったら学生は関与がない状況になったら動けなくなるわけで、ということですものね。これまで悩んできたことが改めて言語化されたな、という気持ちでした。

2日間、充実したフォーラムとなりました。800名もの参加があったそうで、本当に運営する京都大学高等教育研究開発推進センターのみなさんに心から御礼申し上げます。