ご報告(京都外国語大学の退職について)

本日のゼミで、今年度の授業が終了しました。

私、この3月で、京都外国語大学を退職することになりました。4月から、他の大学に異動することになります。

3月20日の卒業式のときに報告しようかとも思いましたが、2月、3月と異動の準備もありますし、卒業生のみなさんなどに対して早めに知らせたほうがいい、ということもあり、このタイミングで報告させていただきます。

昨年末から少しずつ教職員のみなさんなどにご報告しており、今日、京都外国語大学の教員として最後の授業となったゼミの最後に学生に初めて報告しました。まだ直接ご報告できていない方もいらっしゃると思いますが、どうかご容赦ください。

大学院を修了後、2002年に京都外国語大学に講師として着任してから、17年間勤めました。京都外大はとてもいい大学で、感謝の念しかありません。またお礼などは3月末に書きたいと思いますが、あと2ヶ月精一杯勤めたいと思いますし、来年度も非常勤として授業やゼミ(月3、4)は担当できるので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

ユペチカ・西森マリー「サトコとナダ」第4巻

第4巻で最終巻。

サトコとナダ 4 (星海社COMICS)

サトコとナダ 4 (星海社COMICS)

 

日本出身のサトコとサウジアラビア出身のナダが、アメリカ留学でのルームシェアを通して交流していくお話。イスラム教というと、つい怖いイメージを持ってしまいますが、このように一緒に生活を経験していけば、イメージとは違う意外なところや身近なところが感じられる、ということなんだな、と思います。

これは宗教に限らず、他の文化でも似たようなことがありますよね。例えばLGBTだったり、身体障がい者だったり、芸能人だったり、大学教員だったり。最初は、なんとなくの全体的なイメージだけで捉えて、接してしまうかもしれません。でも、個人を知ることで、その人がもつ文化を知ることができたり、その人自身を深く知ることができたりするのかな、と思います。

なんとなくのイメージだけで判断しないようにしていく必要があるな、と思いました。そして、いろいろな人と関わっていくことも大事ですよね。

この巻の途中で、アメリカ留学で苦い経験をしたマチコという女の子がでてきます。憧れを持って留学したけれど、大変なことが多くてしんどかった、ムスリムの人たちを怖いと偏見をもっていた、と。サトコがまた留学するチャンスがあるよ、ということを伝えるのですが、とてもいいシーンだな、と思いました。憧れをもってやってみたけど失敗することはあります。その後、その失敗を活かせるか、乗り越えられるか、が大事だなということだと思いました。難しいですけどね。

学生にも広く読んでほしいまんがです。

クイーンをあまり知らないけど、「ボヘミアン・ラプソディ」を観てきました。

先日、話題の映画「ボヘミアン・ラプソディ」を観てきました。知り合いに「泣けるし、感動するから、観てみたらいいよ」と言われたこともあり、それなら行ってみるか、と思いまして。

www.foxmovies-jp.com

私は年代的にあってるんでしょうけど、洋楽もまったく聞かなかったので、クイーンもほとんど知らず、テレビなどで数曲は知ってるけど、くらいです。そのくらいの知識でも面白いのかしら、と思って観てみたのですが、なるほど、たしかに、いい映画でした。

フレディ・マーキュリーの才能やその自信、人種差別や家族の問題、セクシャリティなどからくる孤独や生きづらさ、といった感情が随所に感じられて、なんとも言えない気持ちになりました。また、恋人メアリーはどんな思いだったんだろうか、など、周りの人達の感情についても、いろいろ思うところがありました。

有名になると、傲慢になったり、みんなが群がってきたり、裏切ったり、いろいろなことが起こるんだな、と思いましたし、その際に信じられるものがあるかどうか、ということがとても重要なんだな、と。天才など才能あふれる人は、それだけでは幸せとは限らない、逆に大変なことも多いよね、ということも改めて考える機会になりました。

最後の「ライブ・エイド」のシーンは、さすがの私でも、すごい、と思って鳥肌が立ちました。音楽の力ってあるよね、と思いつつ、聞いてました。

泣くことはなかった(うるうるはしましたけど)のですが、とても感動するいい映画でした。ちょっとクイーンの曲、聞こうかな、って思いましたね。

 

杉浦真由美「ナースのための伝わる・身につく教える技術」

伝わる・身につく ナースのための教える技術 (CandY Link Books)

伝わる・身につく ナースのための教える技術 (CandY Link Books)

 

杉浦さん@札幌医科大学による、ナースのためのインストラクショナルデザイン入門書。

「教える相手ができるようにならないのは教え方がヘタだから」

「相手ができるようにならないのは教える側の責任だ」

という向後先生の講義を聞いて、インストラクショナルデザインの研究に関わるようになった杉浦さんが、自身の急性期病院でのナースの経験を踏まえて、忙しい看護師を意識して事例ベースでまとめられています。

教え方の「コツ」、運動スキル、認知スキル、態度スキル、実践、と構成されて、まんがでの導入や確認テスト、小項目に分けられた説明、と、インストラクショナルデザインの説明を読みながら、この本がインストラクショナルデザインに基づいて作られていることも理解できるのかな、と思います。

報告のスキーマのところで、医療者間のコミュニケーションツール「SBAR」について説明がありました。状況(Situation)、背景(Background)、評価(Assessment)、R(Recommendation)の頭文字をとったものだそうですが、私は知らなかったので、これは他のところでも使いたいな、と思いました。

”ナースのための”とありますが、特にナースの内容に特化しているわけではありませんので、インストラクショナルデザインの実践系入門書として、広く読むことができるのでは、と思います。

インストラクショナルデザインに興味があるけど、ちょっと敷居が高いんよね、といった方、チェックしてみてはいかがでしょうか。

この本で2回出てきた、カナダの精神科医エリック・バーンの「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」という言葉、すごく納得です。授業に限らず、この精神でがんばっていきたいですね。

 

もう1回「講義の復権」の企画をやってみたい

ブログで授業ネタが続きますが、ちょっと今書きたいモードなので。

近年、アクティブ・ラーニングが話題ですが、この流れ自体は10年以上前からなんですよね。大学コンソーシアム京都のFDフォーラムで、”主体的な学び”や”グループ学習”、”プロジェクト学習”などのキーワードがよくあがっていました。

それで、2009年度のFDフォーラムで、同僚の國安さんから相談を受けたこともあって、「講義の復権 ー理論・実践からの分析ー」という分科会を、私が指定討論になって企画しました。この時代のは報告書をWebで公開してないんだな、、、残念。

www.consortium.or.jp

理論的なお話をしてもらえる方を京大高等教育センターの先生方に相談して、安川哲夫先生@筑波大を紹介していただきました。そして、講義のうまい先生として、大島先生@東京工芸大学、そして私の(元)上司の梶川先生@京都外大を登壇者にお願いしました。

この企画はとても満足したことを覚えているのですが、久しぶりに資料を見てみましたけど、やっぱり面白いです。もう1回、こういう企画をどこかでやりたいな、と思いました。

私などは、安川先生のようなお話を聞いたり、学んだりする機会が少ないので、教育学や教育思想の知識もきちんともっておかないとな、と思います。

もちろんですが、アクティブ・ラーニング、主体的な学び、は重要です。ただ、授業すべてをアクティブ・ラーニングにする必要があるわけではありません。昨日のブログと同様、授業目標に応じて教育方法を選択することが重要、ということです。また、カリキュラム全体におけるバランスも考える必要があります。

自分の授業を設計する時に、考えていかないとな。

ちなみに、梶川先生は、授業アンケートで受講生が50名とか100名でも、満足度4.7とかたたき出しています。満足度が4.5を超える、ってよっぽどなのですが、すごいことです。何度か授業も聞いたことがありますが、本当に板書をしながら話している(学生に発問したりはしない)だけで、すごくわかりやすく学術的にも面白い内容になっています。

梶川先生は落語を参考にして授業しているそうです。だから発問はしないんだ、と。かくいう私は、漫談系と言えるでしょうか。この辺の話、昔、よく2人でしました。

梶川先生は、この分科会ともう1回大学コンソーシアム京都のイベントで話をしてもらったので、しばらくいろんな大学からFD講演に呼ばれていました。FDのイベントに参加している教職員って、自分の大学のFDに呼ぶ講師を探しているケースって多いんですよね。梶川先生、ほんとにおすすめなので、ぜひ(笑)。

 

今も昔も「黒板-PowerPoint論争」

昨日に続いて、数学の話から。

いろいろな大学にFD講演・研修にいくのですが、その際に”自分の授業で困っていること、工夫していることについてワークシートに書いてもらい、グループ議論をする”というワークを行うことがあります。いろいろな話題が出てくるのですが、特に理系の先生がおられる場合に出てくるのが「黒板-PowerPoint論争」です。これは、私が院生のときから話題になっていたテーマで、私の知る限り、20年来のテーマだと言えます。

先日、私の大学院の先輩である角さん@京大が、Facebookにこのようなことを書かれていました。

-------
数学と生物学の授業の仕方の違いなどのお話になりました。一番の違いは、数学の授業は、パワーポイント全盛の大学授業のなかで、唯一、板書で通すものであることです。
 数学の授業で板書を使う理由についてですが、純粋数学の数式は、パワーポイントで流されると、数学者でも全く理解できないことがあるからです(笑)。数学については、一行一行、板書するのが一番いい、と多くの数学者が思っています。
-----

なるほどなぁ、と思いました。たしかに生物学であれば(一口には言えませんが)、たしかにPowerPointの方が向いてるだろうな、と。画像も見せたいですしね。

PowerPointが普及しはじめた頃、PowerPointの方が便利だ、みたいな風潮もたしかにありました。PowerPointの方が情報量も多いですし、画像や映像なども使えて便利ではあります。実際、私もほとんどの授業でPowerPointを使っています。そうすれば、前年の授業資料を使えますし、なにかあれば他の授業の資料もさらっと見せることができます。

ただ、私も数学の授業については、黒板を使っています。数式を展開して説明する場合には、黒板のほうがテンポがいいからです(しかも、ホワイトボードも基本的にいやなので、黒板の教室にしてもらっています)。

工学系の先生も、黒板とPowerPointを使い分けている先生、PowerPointにした場合は学生がノートをとらなくなるので、穴埋め形式にしている先生、などいろいろな工夫をされています。

黒板やPowerPointなどの教具については、授業目標に応じて適切に選択する、ことが求められます。プリントのほうがいい場合もあるでしょう。数学の場合は、数式の展開を理解する速度と板書の速度が一致することで、学生が理解しやすい、ということになると思います。PowerPointで一気に見せたところで、理解に時間がかかりますしね(アニメーションを使うという手もありますが)。

昨年11月の教育メディア学会のシンポジウムで、宇治橋さんが視聴覚教育の歴史を振り返っていましたが、新しい教具をどのように使っていくか、は、いつの時代も課題なんだろうな、と思いますね。

また、数式を展開している際にどこまで解説するか、というのも、学生のレベルによって変わってきます。昔、田中毎実先生(元京大高等教育センター)も言ってましたが、「京大ならひたすら板書を続けてもいい(分からないのがいやなので、自分でわかろうと努力する)が、別の大学でそのやり方だと、学生から”先生が解説しない”とクレームがくる」と言った話をされていました。学生がどのような特性を持っているか、にあわせて教え方も変えていかないといけない、ということだと思います。

例えば、中高の数学だと、生徒の学力に応じて、板書のテンポや文字の大きさを変える、ということも必要になってきますね。板書でも一気に書いてしまうと理解しようとせずに移す作業だけで終わってしまう、ということになります。

こういった話は、インストラクショナルデザインで説明されている内容なので、ぜひみなさん、インストラクショナルデザインを学んでほしいな、と思います。

  

大学授業改善とインストラクショナルデザイン (教育工学選書II)

大学授業改善とインストラクショナルデザイン (教育工学選書II)

 

 

授業設計マニュアルVer.2: 教師のためのインストラクショナルデザイン

授業設計マニュアルVer.2: 教師のためのインストラクショナルデザイン

 

 

 

 

 

私立文系大学で、数学の授業をやってきて

私は、もともと中学か高校の数学教員になるつもりでした。大学に入ってから、その方向は少しずつ変わり、結果として大学の教員になりました。

京都外国語大学という私立文系大学で、数学系の授業として、大学で「情報と論理」(昔は「情報数学」)、短大で「数的理解」を担当しています。楽しく授業しています。

京都外大生だと、数学が苦手、という学生が多いのに加え、1回目の授業で「わからないかもしれないのですが」「わからなかったら、怒られませんか?」みたいな質問をしてくる学生もいます。びっくりしますが、これまでにそういう経験をしてきたのかな、と。

「情報と論理」は、結城浩さんの「プログラマの数学」を教科書にしているので、ある意味、大学レベルの数学も入っていますし、命題論理などは言語学にも関連するので、京都外大としてはちょうどいい内容だな、と思って使っています。

プログラマの数学第2版

プログラマの数学第2版

 

授業では60分ほど説明して、1章を2回の授業で終わらせる感じです。ずっとだと疲れるので、残りは”おまけ問題”と称して、数学パズルをやっています。ニュートンムックのシリーズなどいろいろな本から抜粋したり、Nクイーン問題、数独をやったりしています。 

厳選数学パズル―名作から超難問まで (ニュートンムック Newton別冊)

厳選数学パズル―名作から超難問まで (ニュートンムック Newton別冊)

 

先日は「博士の愛した数式」を40分ほど見て、 完全数友愛数ネイピア数オイラーの公式の説明をしました。80分しか記憶のもたない数学者と家政婦、その息子(ルートくん)の物語ですが、毎年観ていますが、何回見てもいい映画です。ルートくんは高校の数学教員になっている(映画では吉岡秀隆)のですが、学生のコメントシートに「あんな先生がいたらよかったのに」という感想が書かれます(笑)。

博士の愛した数式

博士の愛した数式

 
博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

 

「数的理解」では、例題の解説、問題演習と解説、”おまけ問題”、毎週の宿題で構成しています。短大生だと、とりあえず数字を適当に計算しがちなので、丁寧に立式することを繰り返し、教えます。25名程度なので、机間巡視を重視し、こまめに個別フォローして、できたらほめるようにしています。数学の問題に取り組む体力があまりないので、少しずつ慣れてもらうこと、問題が難しそうだからといってすぐにあきらめずに取り組んでもらえるように心がけています。

どちらの授業でも、最後の方になると、少しはできるようになってきた、という実感をもてるようになる(多少はあおってますけど(笑))ので、そういう感想が出てくるとうれしいですね。

大学の授業(とくに教養教育系の科目)は、授業内容を習得すること自体が大事ではありますが、それよりもどうやって学ぶのかを習得すること、内容に興味や関心を持てるようになることが大事かな、と思います。

学生には「卒業してからも、ずっと勉強することになるんだから」と言ってますが、人生100年時代、生涯学び続けることのできる能力を身につけてほしいですし、幅広い分野について興味や関心をもってもらえるといいな、と思っています。