宇田川元一「他者と働く ー「わかりあえなさ」から始める組織論」

出版されて話題になっていたので、すぐ買って読んだのですが、なかなか書く機会がなかったので、正月にご紹介。

他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論 (NewsPicksパブリッシング)

他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論 (NewsPicksパブリッシング)

  • 作者:宇田川 元一
  • 出版社/メーカー: NewsPicksパブリッシング
  • 発売日: 2019/10/04
  • メディア: 単行本
 

 「「わかりあえなさ」から始める組織論」とありますが、そもそも人間同士わかりあえないですよね、というところから出発したほうがいいですよね、ということですね。

まず、「知識として正しいことと、実践との間には大きな隔たりがある」(p.3)と述べられています。”正しいと思ってるけど、できない”ということもあるでしょうし、”自分は正しいと思ってるのに、相手(例えば、上司)は正しいと思っていない。おかしい。”といったことなんかもあるのかな、と思います。

この本では、組織における(人間の)関係性に注目して、組織の問題を考えていきます。その際、「相手を変えるのではなく、こちら側が少し変わる必要があります」、と述べられています(p.32)。これはすごく大事なことですね。

そして、”ナラティブ”をキーワードとしてあげています。ナラティブとは、物語、解釈の枠組み、という意味で用いられています。それぞれの立場、とも言えるでしょうか。

人には、それぞれの立場がありますから、ナラティブの溝ができてしまいます。このナラティブの溝を渡るために、対話が重要となること、その4つのプロセスとして、準備、観察、解釈、介入をあげて説明しています。

1つの例として「「上司が無能だからMBAに来た」というナラティブ」が紹介されています。その場合、MBAをとったとしても、上司を説得することはできない可能性が高いですよね。たとえ、上司を論破しても、自分の意見を聞き入れてもらえるわけではない、むしろ、逆効果になる可能性が高いと思われます。相手のナラティブをどう理解するか、ということの方が重要になります。

第3章以降では、具体的な問題を考えており、総論賛成・各論反対、正論が届かない溝、権力が生み出す溝、など、頭に思い浮かぶような話題が出てきます。

30代前半に正論で行き過ぎることも多く、たくさん失敗もしました。30代後半、「おやじ転がし力」なるワード(笑)をよく使っていましたが、意識的にふところに入れるように頑張ったのを思い出します。「論理を通すためには、前提として感情をおさえていないといけない」ということを学んだ30代、と言えるかもしれません。

もともと、相手の感情や考えがなかなかわからないタイプなので、かなり意識的にトレースするようにしているのですが、そういう私にもとてもわかりやすい、納得できる本でした。

企業で働く方、組織に属している方、いろいろなところで適用可能だと思いますし、分かりやすく書かれていると思いますので、広くおすすめできる、と思います。

大きな本屋に行けばあると思いますので、ぜひ。